「非常戒厳」を宣言した韓国の尹錫悦大統領が逮捕されたと現地メディアが報じました。
■歴代大統領が罪に問われる韓国 「帝王的大統領」の“強すぎる立場”
現職大統領として、韓国史上初めて逮捕されたユン氏ですが、韓国メディアの聯合ニュースなどによると、現在、大統領が収容されているのは、ソウル拘置所にある独房とみられています。
トイレやテレビ、寝具などは備わっているものの、6畳ほどの小さな部屋です。
ソウル拘置所の同じような独房には8年前、パク・クネ元大統領も収容されたとみられています。
韓国の財閥から、巨額な賄賂を受け取ったとして逮捕されたパク・クネ氏。
さかのぼると、その前任のイ・ミョンバク氏も収賄罪。
さらにその前任のノ・ムヒョン氏も、不正資金疑惑で捜査を受けている最中に自ら命を絶つなど、ここ5代の韓国大統領のうち、本人が無傷なのはムン・ジェイン氏だけなのです。
韓国の大統領は、なぜ多くがこうした末路をたどるのでしょうか。
そこには、大統領の強すぎる立場が指摘されています。
韓国大統領は、首相を任命できるほか、法案の拒否権から軍の最高指揮権まで、様々な権限を持ち、任期は5年の長きに及ぶ「帝王的大統領」とも呼ばれます。
このため、家族や側近も権勢を振るいやすく、不祥事が起きやすいとされます。
一方で政権交代を狙う反対勢力からは、批判の的になりやすく、保守派と革新派が、長年にわたり激しい政争を繰り返してきたのです。
■与党支持率急回復のワケは?韓国政界の“これから”
こうした中、あるデータが注目を集めています。
韓国の政党支持率は、2024年12月に非常戒厳が出された際は、与党「国民の力」が急落、
最大野党「共に民主党」に大きく水をあけられましたが、最近、与党の支持率が急回復し、ユン氏が拘束された後に発表された最新の調査では野党を3ポイント上回ったのです。
世論の変化について、韓国政治に詳しい神戸大学の木村幹教授は「分断が激しいため、このまま与党の支持率が高まるわけではないが、激しい批判を繰り返す野党にも国民は嫌気がさしていて、分散していた保守派の再結集に繋がったのではないか」と分析しています。
さて、ユン大統領の今後ですが、内乱罪と並行して大統領の「弾劾審判」が進みます。
憲法裁判所が弾劾を妥当と判断すれば罷免、つまり失職し、60日以内に次の大統領を決める選挙が行われることになるのです。
実は次期大統領の有力候補といわれる、野党「共に民主党」のリーダー、イ・ジェミョン氏も、現在5つの罪に問われていて、公職選挙法違反の罪では、2024年11月、1審で有罪判決を受けています。上級審でも有罪となれば、国会議員の地位を失い、大統領選にも立候補できなくなるのです。韓国政治の機能不全を象徴するような事態です。
与野党ともに不透明な国政界の“これから”。
社会の混乱は、しばらく続くことになりそうです。
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