
高値が続くコメ。日本一早く田植えが始まる沖縄・石垣島では、早くも「新米争奪戦」が繰り広げられています。一体、誰が買い付けているのか?取材で意外な実態が見えてきました。
■価格高騰 米問屋も仕入れ苦戦
16日、福岡の農村に向かったのは、コメの卸・販売をする新飼哲哉さん。
(米のしんかい・みのりや 新飼哲哉代表)「これから令和7年度産の仕入れに向けてのご相談をしに(農家へ)伺います」
これまで業者を通して仕入れてきた新飼さん。しかし去年は、計画通りに仕入れられなかったと言います。
(米のしんかい・みのりや 新飼哲哉代表)「(前年産に対し)もう2~3倍というような仕入れ価格になっているので、お客様に提供しようとすると5kgで5~6千円というような価格じゃないと合わない。我々としては手が出しづらい」
そこで始めたのが、仕入れ先の“新規開拓”です。美味しいコメを少しでも安く仕入れようと、農家を直接訪ねました。しかし…
(米のしんかい・みのりや 新飼哲哉代表)「田植えもしていないものになるので、あくまで口約束というとアレですけど…」
(コメ農家 馬場康平さん)「契約を交わしてどうこうっていうのは、なかなか難しいですよね」
先の見通しが付きにくいことなどから、結果は“保留”。
(米のしんかい・みのりや 新飼哲哉代表)「やっぱり既存のお客様優先っていうのはもちろん皆さんおっしゃいますし、あとはもちろん1円でも高くっておっしゃるところもありましたし、年が明けてからはほぼ門前払いが多いですね」
■日本一早い新米 田植え前から争奪戦
早くも始まっている、今年の“コメの争奪戦”。
沖縄の離島にも、その影響がでていました。15日、石垣島のこちらの農家では、ことし初めての田植えが行われました。
(有限会社山七 山田義哲代表取締役)「毎年そうですけども2月10日から20日ごろの田植えはやっぱり緊張しますね…」
山が多く水が豊富なことから、実は沖縄一の米処でもある石垣島では、二期作が行われ、一期米は5月ごろに収穫されます。“日本一早い新米”ということもあり、新規業者から買い付けの問い合わせが急増しています。
(有限会社山七 山田義哲代表取締役)「神奈川あるいは四国ですか、山梨からも初めて来られたところもありました。本土からの引き合いがかなり強いですね」
『ひとめぼれ』など、年間約70トンのコメを生産する山田さん。今年は少しでも多く収穫できるよう、通常より稲の本数を増やすといいます。
(有限会社山七 山田義哲代表取締役)「この機会に石垣島がどんどんコメが出来て、今の状況がちょっとでも緩和できる一つの過程になればいいかなと思っています。石垣なんて本当にしれた収穫量なわけですが、それでも石垣まで来て『どうにか100袋でも200袋でも』っていうのは、やはりコメが無いんだなって…」
■米買い付け 1200万円分現金で
いま、コメの価格が急騰しています。政府はその一端に、JAなどの集荷業者に収められていない、いわゆる“消えた21万トンのコメ”があるとみています。
コメはどこに行ったのか?取材を進めていくと、片鱗がみえてきました。
つくば市にあるコメ農家には、去年、スーツの男性が突然やってきて、こう話したと言います。
(スーツの男性)「おコメが足りないので、50トン譲ってくれませんか?」
海老沢さんは、余裕があったコメを販売することに…
(夢田ファーム 海老澤信之代表取締役)「30トンしか出せなかったですかね。稲刈りの終盤ということもあったんで」
売買は運搬の都合からか、5回に分けて行われました。これが納品書の一部です。10トンで408万円。男性は現金で支払ったと言います。
Q.1回1回現金を?
「そうですね、1回1回手渡しですね」
Q.例えばですけど札束を?
「そうです。『はい』って」
コメを買い付けに来たのは、茨城県内でフランチャイズの焼き肉店などを展開する企業でした。
(夢田ファーム 海老澤信之代表取締役)「去年8月のコメ不足というのは、その業者さんも言ってましたけども、どこのコメだか分からないようなコメを買い集めなくちゃいけない状況であったと。心配ないようにちょっと多めの数量を確保したいんじゃないかな。」
この会社からは、今年になって再びコメの買い取り依頼が来たと言います。
(夢田ファーム 海老澤信之代表取締役)「言われているのは50万トンと言われていますけど、そこまでは無理なので、50トンから100トンくらいはいけるのかなと思いますけど」
他のコメ農家からは、こんな声も…
(新田野ファーム 藤平正一代表)「中国人が多いね。来てね『おコメありますか?』って『横浜の中華街で、5kgのパッケージにして売っているんだ』って。」
■米不足は“売り渋り”だけじゃない
“コメの争奪戦”ともいえる事態に政府は“消えた21万トン”を根拠に、同量の備蓄米の放出を決定。しかし専門家は、“政府はコメの流通の全てを把握できている訳ではない”と指摘します。
(農業経済学が専門 東京大学大学院 鈴木宣弘特任教授)「政府が把握できているのは、JA系統の出荷と大手の卸の出荷量であって、それ以外の出荷量については十分把握できていない。農家さんがJAを通じて売る量は全体の4割ぐらいまで少なくなっています」
以前は主流だったJAなどを通じた取引ルートが縮小。いまは、農家との直接取引など、政府が把握できないルートが大きくなっているというのです。さらに…
(江藤拓農水大臣)「需要に見合うだけのコメの量は、確実にこの日本国の中にある。流通に問題がある。これまでコメの取引にまったく参入していなかった方が多数参入してきている。」
投機目的などの“売り渋りが理由”などと政府は説明していますが、この点にも専門家は疑問を呈します。
(東京大学大学院 鈴木宣弘特任教授)「責任転嫁してしまうような形で使われるのがおかしいわけで、価格が上がってきたということ自体、コメが不足している、足りていないということなんですよね。今必要なことは、コメが足りていないということを認めて増産してくださいと農家にインセンティブ(働きかけ)を出すことですよね」
2月16日『有働Times』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
powered by Auto Youtube Summarize