
政府は、備蓄米の放出を決めました。流通の円滑化を目的に、備蓄米が放出されるのは、史上初です。
年20万トン、5年分、約100万トンのうち、21万トンをJAなどの集荷業者に売り渡します。
去年8月ごろから、スーパーなどでコメの品切れが相次ぎ、価格が高騰しました。当時も備蓄米の放出を求める声が上がりましたが、政府は「新米が出回れば品薄は解消する」としていました。しかし“米騒動”は収まらず、ここにきて方針転換です。
江藤拓農林水産大臣
「この半年余りの期間に『なんでもっと早く決断できなかったんだ』という批判は甘んじて受け止めます。私が農林水産省の責任者ですから。“農家の所得を増やしていこう”そういうことを一生懸命やっているときに、一番、私としてはやりたくなかったことは、農家の方々の生産意欲をそぐことです。地元の方々もいまの値段は困ると言っていました。市場に対して、公の立場の者が、価格に影響を与えるような行動をすることは、王道ではないと、最初から申し上げている。やると決めた瞬間から思っている。いまもそう思っている。しかし、ほかに手がないです。私が責任を取るという覚悟のもとにカードを切った。このメッセージを受け取っていただいて、市場が正常化すること、流通が正常化することを願っている」
政府は、3月上旬に集荷業者の入札手続きを始めます。集荷業者の1カ月の販売数にあたる15万トンを予定していて、10万トンは2024年産、5万トンは2023年産の古米です。店頭には、早ければ3月下旬にも並ぶ見込みです。“出し渋り”のないよう、集荷業者には販売実績の報告が義務付けられます。
スーパーマルセン 太田雅悠専務
「5月には6000円近くになるという予想だったので、少しでも上げ幅が小さくなる、上がるペースが遅くなる。そういった効果が期待できるのではないかと」
そもそも2024年産のコメの生産量は前年より増えています。放出される21万トンは、大手集荷業者を通じて売られるコメのうち、前の年より減ってしまった量。いわば“消えた21万トン”と同じ量です。
江藤拓農林水産大臣
「まずは、今回の措置を市場がどう受け止めるのか。今回は、これまで米の取引に全く参入していなかったような方が、多数、参入してきていることも、だいたいわかりました。農家も取引業者も調査を進めています。3月の中旬以降には、調査結果を報告します。正常じゃない状況を正常に戻す。コメに限らず、流通がどこかでスタックして、特定の人が利益を享受するのはよくないですよ」
日本の主食。影響を受けない人はいません。
おむすび一路 飯田篤志店主
「コメの先物投資が始まった。それが一番の原因だと思う。投機だと思っている別の事業者たちが参入して、買い占め、出し渋りして、それでがっと囲われたら、ぐっと上がっちゃうし」
長年、日本の農業をみつめてきた記者。
日本農業新聞(コメ担当) 宗和知克次長
「21万トンという数量の規模でいうと、インパクトを与える規模だなと率直に受け止めました。投機的な動きが活発になって、上がった価格があると思う。その投機的な価格は、落ち着いてくると思う。それが全体の価格にどこまで波及してくるかがポイントで、それによって、店頭価格も影響を受けるんじゃないかと。市場は、コメに関する産地も業者も、コメがどこにあるのかわからないという不安が広がっている。その実態を精緻に明らかにすることが、市場の不安を解消する」
100年以上続く米店。すでに1年分のコメを契約したため、在庫はあります。ただ、仕入れ値は例年の2倍でした。お客さんと“痛み分け”の現状です。『つや姫』を3キロ購入する常連客は、毎週630円、出費が増えました。
農家の思いも聞くなか、適正価格での販売に向け頑張ってきましたが、現在の値上がりは、早すぎるといいます。
山菊米穀店 雨間瑞秀3代目店主
「本来、そこまで価値のないものが、ものすごく高騰しているので、我々の思いとは少し違ってしまっている。コメ離れもそうだし、離農者が増えます。農業をやめてしまう。100年先のことまで考えて、農業のことを見ていかないと、この1年、高いからどうだった、来年がこうだったという話ではない」
備蓄米の放出には、2023年産の古米も含まれます。
江藤拓農林水産大臣
「私自身も、この古米をわざと冷まして、おにぎりにして食べました。私も局長も課長も誰も区別がつかない。食味的にも香り的にも、十分な品質を保っていると、自信をもっています」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
powered by Auto Youtube Summarize