
長島清隆解説委員のG7広島サミットコーナーです。
NPT再検討会議が終了しましたが、最終文書に合意することは出来ませんでした。
来年、被爆地広島で開かれるG7サミットに向けてどのような影響があるのでしょうか。
■NPT再検討会議 スラウビネン議長
「今日、残念ながら、たった一か国が異論を示した」
先月、ニューヨークの国連本部で行われたNPT再検討会議は
ロシアがウクライナのザポリージャ原発を巡る表現などを巡って反発し、
7年前の前回に続き最終文書に合意できませんでした。
広島の被爆者からは落胆の声です。
■広島県被団協 箕牧智之理事長
「NPTは核拡散防止条約の再検討会議だから核兵器のことだけ話す会議。
他は話さなんでもいい。それが各国の思惑違いでとうとう最終文書がまとまらんで、
我々被爆者にとってはまさに期待外れの会議だった」
来年はG7広島サミットが開かれます。
岸田総理は「NPT体制が核軍縮の取り組みの礎石である」という考えに
変わりはないことを強調しました。
■岸田首相
「日本としては引き続き、NPTを維持強化していくことこそが、
核軍縮に向けた唯一の現実的な取り組みであるとの信念を持って」
「G7広島サミットを見据え、核兵器のない世界の実現に向けた
国際社会の機運を高めていきたいと考えています。」
NPT再検討会議は残念な結果でしたが、G7サミットにはロシアがいません。
だから話がまとまりやすいと考えていいのでしょうか?
核保有国はアメリカ、イギリス、フランスの3ヶ国です。
そしてほかの国もアメリカの核の傘にある国とEUです。
価値観は同じ国ですから、まとまりやすいということは言えます。
ただ、このメンバーでロシアを批難することで終わっては
言い方を変えれば、ロシアを悪者にして自分たちの核軍縮の停滞から
目をそらすことになっては進展があったとは言えません。
NPT再検討会議が合意できなかった中での広島サミットの課題を専門家に聞きました。
国際政治が専門の広島平和研究所の大芝所長です。
大芝所長は、近年のサミットではG7以外の国をゲストとして招待していることに注目します。
■広島平和研究所 大芝所長
「G7サミットに欠けていて、核軍縮の問題を検討する上で
不可欠な国はどこかと言えば、私は核兵器禁止条約の締約国だろうと思います。」
「核兵器禁止条約の締約国のリーダー的な国を招聘して
そこを含めた会議を開催してもらいたい。」
核兵器禁条約は今年1月に発効し6月に締約国会議が開かれました。
しかし、日本はオブザーバー参加すら拒否。
NPT再検討会議でも保有国らは核兵器禁止条約に最終文書で言及することに抵抗しました。
サミットに禁止条約締約国を呼ぶのは日本にとって大きな決断です。
■大芝所長
「成果はすぐには出ないと思いますが、日本外交の何を目指すのかいうのがわかってくるし、
岸田政権が言う橋渡しというのは、具体的に何を目指しているかも見えてくると思います」
サミットにはG7以外の国も参加することがあるんですね。
最近のサミットはゲスト国を招待するのが一般的です。
今年のドイツでのサミットでは、
ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで参加したほか、
インドやアルゼンチンなどが出席しました。
議題ごとにいくつかのセッションに分かれるので、
セッションごとに参加者が変わるというスタイルです。
日本にはG7以外の国も含めた「橋渡し」をしてほしいですね。
核軍縮を巡っては核保有国と非保有国の対立が言われます。
しかし、非保有国の中でもいわゆる核の傘の下にある国とそうでない国の溝が大きいんです。
核兵器の先制不使用を巡っても、
核保有国だけでなく、核の傘の下にある国が慎重な姿勢なんです。
核兵器禁止条約の締約国は核の傘にない国なので、こういう国を交えて話せれば、
「ああ、日本は本当に橋渡しをしようとしている」と
国際社会からの見え方が大きく変わるわけですね。
NPT再検討会議が合意できなかった中で
G7サミットで核兵器のない世界という理想に近づくために
日本がどのような決断をすることができるのか注目されます。
《2022年9月2日(金)広島テレビ『テレビ派』で放送》
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