
ウクライナ東部・ルハンシク州の知事や、激戦地マリウポリの市民が、私たちの取材に対し、ロシア軍が市民を強制的に連行していると相次いで証言しました。
■強制連行か…知事訴え「市民がロシア兵として戦地に」
ウクライナ各地でロシア軍の攻撃が強まっています。4月17日、ウクライナ第2の都市ハルキウでは、救助隊員がけが人を手当てし担架で運ぼうとした矢先に…
「ドン!」(着弾する音)
救助隊員「さがれ!」
近くに着弾し、救助隊員らは慌てて建物の中に避難しました。被害は幼稚園や病院にも及び、ハルキウ州当局によると5人が死亡したとしています。
ポーランド国境に接する西部のリビウも狙われました。地元知事などによると18日、ロシアのミサイル4発が軍事施設などに着弾し、これまでに7人が死亡し、11人が負傷しました。
一方、ロシア側が攻勢を強める東部の町はより深刻な状況です。16日、ルハンシクにある製油所はロシア軍の攻撃で炎上し、空高く黒煙が立ち上りました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領
「ロシア軍はマリウポリを破壊しているように、ドネツク州とルハンシク州の街やコミュニティーを全滅させようとしている」
州の8割がすでにロシア側に制圧されたというルハンシク州の知事が、危機的な状況を私たちに明かしました。
ルハンシク州 ガイダイ知事
「すべてが無差別に破壊されています。攻撃されなかった病院は1つもありません。学校、保育園、集合住宅なども攻撃を受けています」
ルハンシク州の知事が自身のSNSで9日に投稿した、化学工場が攻撃を受けた際の映像には、もうもうと上がる赤く染まった煙が映し出されていました。
一面“焼け野原”になった場所もあります。建物だけでなく、どこが道なのかも分からないほど破壊されています。また、知事は「多くのウクライナ人男性がロシア軍によって強制連行され、“ロシア兵”として戦地へ送られようとしている」と訴えます。知事はその様子をSNSで投稿。赤い服を着た男性が数人のロシア兵に取り押さえられている様子が映っていました。
ルハンシク州 ガイダイ知事
「ロシア軍が市民を強制的に戦争に送ろうとしています。ロシア軍は65歳未満の男性で逃げきれなかった人や隠れている人を探し出し捕まえています。男性はもうほとんど残っていません」
■荒廃進むマリウポリ 避難した市民“地獄の経験”
ロシア軍に包囲されている南東部のマリウポリ。ロシア側はウクライナ兵に“投降”を呼びかけました。
ウクライナ シュミハリ首相
「まだマリウポリは陥落していません。現時点で我々の兵士はマリウポリにいて最後まで戦います」
投降期限を過ぎた後、シュミハリ首相は「最後まで戦う」と強調しました。
一方、いまも12万人以上取り残されているとみられる市民は苦境に立たされています。マリウポリから避難した男性に話を聞きました。
国山ハセンキャスター
「マリウポリではどんな経験をされたんでしょうか?」
マリウポリからキーウに避難したスタニスラフさん(23)
「マリウポリでは本当に地獄を経験しました。街が絶えず砲撃されている中で生活をしていました。軍人ではなく民間人が砲撃されました」
部屋にはロシア兵がやってきて、軍人かどうかの身体検査を受けたと言います。
スタニスラフさん
「軍人ではないことを証明するため、上半身を脱がされました。タトゥーや武器を装備していた跡が体にないか調べられました」
軍人であることがわかった場合、射殺された人もいたと言います。またロシア国内に連行された人もいると言います。
スタニスラフさん
「おととい私の友人の親戚が(ロシア国内の)タガンログに強制連行され、収容所にいます。間もなくロシアの極東に送られると思います。強制的で行き先の選択肢はありません」
■ウクライナ軍スナイパー“死亡記事”に本人反論
先日、複数のロシアメディアが“朗報”としてこんな記事を配信しました。
ロシアメディア
“ウクライナの有名なスナイパー、オレナ・ビロゼルスカを殺害した”
ウクライナ軍のオレナ・ビロゼルスカ氏はクリミアが併合された2014年以降、ロシア側との戦いで戦果を挙げ続け勲章を3回受章したスナイパーです。
彼女が殺害されたとなればウクライナ軍にとって打撃になりますが、本人のSNSを見ると引き続き書き込みが。
ビロゼルスカ氏のSNS
「敵は女性の遺体を撮影し、ビロゼルスカだと主張しました。その女性は誰だかわかりませんが民間人のようです」
遺体は自分ではないと反論。彼女は生きているのでしょうか?記者がコンタクトを取ってみると…
記者
「返事がきましたね。『電話をください』と返事がきました」
(電話をかけると…)「かかりました」
ウクライナ軍 オレナ・ビロゼルスカ氏との電話
「私は生きているし、極めて健康です。安全なところにいます」
ケガもなく元気で、ロシア側の死亡記事はフェイクニュースだと話します。ジャーナリストからスナイパーへ転身し、今ではロシア側と戦うシンボルの1つとなっているビロゼルスカ氏ですが、数日以内にスナイパーとして戦場に立つといいます。
ビロゼルスカ氏との電話
「全面的な戦争が避けられないとわかった時ウクライナ軍に戻りました。数日後また前線に行くと思います」
こう話したビロゼルスカ氏ですが、SNSにはこんな本音も…
(ビロゼルスカ氏のSNS)
「本当に、私は平和な生活を送りたい。でも今のところそれはできません。まあ、戦争には怒りが必要です」
■通信サービスに人だかり「私たちは生きている」
まったく先が見通せない中、ほんの少しだけ日常を取り戻せた人たちもいます。ロシア軍に占領されていたイヴァンキフ。奪還後、家族と連絡を取るため、広場には人だかりができていました。
広場にいた夫婦
「子どもと連絡を取っているんです。ウクライナの西の方に住んでいます」
人々の中心に置かれていたのは丸いアンテナ。衛星を使った通信サービス「スターリンク」の送受信機です。
電気自動車テスラの創業者イーロン・マスク氏が率いるスペースX社が開発したスターリンク。侵攻開始直後、ウクライナのフェドロフ副首相とマスク氏のツイッターでのやりとりでサービス開始が決まり、占領されていた地域にも機器が届き始めたのです。
スターリンク利用者
「接続は良好です。必要な人全員に連絡が取れました。親戚にあいさつをして私たちが生きていることを伝えることができました」
1000人近くの従業員を抱えるIT企業にも、スターリンクのWi-Fiルーターやアンテナが届いていました。
各地のオフィスで従業員たちが活用し、経済活動を続けているといいますが、意外な弱点が…
ウクライナのIT企業従業員
「残念ながらこのシステムは少し気まぐれで、分厚い雲があると、通信スピードが遅くなってしまうんです」
侵攻開始以降、約200人の赤ちゃんが生まれた病院でも、スターリンクの機器が届きはじめ、これからの活用に期待を寄せています。
周産期センター所長
「スターリンクは緊急事態のときに活用するつもりです。遠くいにいる親族と患者が連絡を取れれば安心できるし他の病院と連携を取ることもできる」
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