
アメリカのトランプ大統領は、すべての国を対象にした“相互関税”の導入を発表しました。
アメリカ トランプ大統領
「きょうこそ待ちに待った『解放の日』だ。2025年4月2日は産業再生の日。アメリカが自らの命運と、国家の豊かさを取り戻す日として、永久に記憶されるだろう。私は、まもなく歴史的な大統領令に署名する」
大きなボードを取り出しました。そこには詳細を伏せてきた相互関税の全貌が書かれていました。
アメリカ トランプ大統領
「一行目は中国だ。中国は、我々に67%の関税を課している。67%の関税だが、我々は34%の割引した相互関税を課す。EUは、非常に手ごわい貿易相手だ。彼らには20%を課す。ベトナムは交渉上手だ。私と彼らは相思相愛だが、いかんせん90%の関税だ。我々は46%を課す」
アメリカが多額の貿易赤字を抱える約60の国と地域、それぞれに関税率を発表していきます。
どれもアメリカにとって重要な貿易相手ですが、岩盤支持層を前にトランプ大統領の頭の中にあるのは「アメリカは被害者」という意識だけです。
アメリカ トランプ大統領
「同時に最低ラインとして、一律10%の関税を設ける」
すべての輸入品に一律で10%。発展途上国や、ペンギンやアザラシなどしか住んでいないオーストラリアの無人島までもが対象です。
アメリカ トランプ大統領
「日本はタフだ。素晴らしい人たちだし、彼らのやりかたを責めない。むしろ賢いと思う。責めるべきは大統領執務室に居座っていた前任者らだ。日本は、アメリカに46%の関税を課している。自動車は、さらに高い。だから日本に24%を課す」
日本に課された相互関税は24%。日本は、アメリカに対して46%に相当する関税を課しているからだといいます。
この46%という数字。トランプ氏は、単なる貿易赤字だけでなく、“非関税障壁”と呼ばれるものを加味した数字だとしています。
“非関税障壁”とは、相手国の製品の安全基準や、業界団体がつくるビジネス上のルールなど、アメリカにとって足かせとなるもののこと。日本の場合、これを含めると46%だとしていますが、導きだされた計算式は、よくわかりません。
日本へは、こんな言葉で締めくくられました。
アメリカ トランプ大統領
「日本の安倍総理は素晴らしい人だった。残念ながら殺害されてしまった。『晋三、不公平な貿易だ。なんとかすべきだ』と言った。彼は『わかっている』と返した」
一律に課す10%の相互関税が5日から、日本など約60の国と地域に設定された、より高い税率は9日から発動となりました。
石破総理
「このような措置が実施されたということは、極めて残念であり、不本意に思っています」
政府は、全国約1000カ所に、中小企業などの懸念に対応する相談窓口の設置を決めていて、関係閣僚による対策本部も開かれました。
世界に誇る『メイド・イン・ジャパン』の企業に衝撃が広がっています。
冷凍ホタテを主力商品とする北海道紋別市の水産加工会社。2年ほど前からアメリカへの輸出を強化していました。
丸ウロコ三和水産 山崎和也社長
「アメリカに輸出できる設備・工場の衛生管理など、基準をクリアしないとアメリカにも輸出ができない。価格(値上げ)に応じて、数量が減るとなると、設備投資している部分にも、多少は影響が出てきます」
世界に誇るユネスコの無形文化遺産『酒造り』。特に、日本酒のアメリカへの輸出額は114億円にも上ります。
高砂酒造 廣野徹取締役
「物価上昇は(アメリカ)国内で必ず起こってくると思うので、日本酒を手に取っていただくのは難しくなってくる。純米大吟醸の商品を輸出していたのを、アメリカ国内には、グレードの低い純米酒などに切り替えることが必要かもしれない」
建築現場用の重機を作る工場。数年前から、円安を背景に日本に生産の軸足を置いてきました。そこに発動した自動車の追加関税25%。発動日まで、駆け込みで生産をしてきました。
25%が、特殊な重機に当てはまるのかは、いまのところわかっていませんが、3日に発表された相互関税24%で、高い関税がかかることは、ほぼ確定的になってしまいました。
重機メーカー『諸岡』 諸岡昇社長
「24%とパっと出たので、本当に頭の中が真っ白になった。本当かなというのが率直な感想。やっと軌道に乗り始めたところで、それがこのような形になったので、今後の動向はわからないが、日本で作るべきか、それともアメリカの工場で、もう一回、量産を始めるかの議論が中心」
3日の東京株式市場では、世界的に景気が減速するとの見方が広がり急落。日経平均は、一時、1600円あまり値下がりし、取引時間中では、今年、最大の下げ幅となりました。終値は、去年8月以来の安値水準です。
対米貿易で最大の赤字を出している中国。
合成麻薬“フェンタニル”の流入を防ぐためとして、すでに20%の関税が課されているので、34%の相互関税と合計で54%もの関税がかかることになります。
中国外務省 郭嘉昆副報道局長
「貿易戦争、関税戦争に勝者はいない。保護主義に出口はないと中国は幾度も強調した。中国は、断固として反対し、必要な措置を取り、自身の正当な権益を断固と守っていく」
貿易赤字2355億ドルを出しているEUも、20%の相互関税の対象となりました。
EU フォンデアライエン委員長
「私たちはいつでもアメリカと交渉にのぞむ用意がある。大西洋間の障壁を取り除く交渉です。
同時に、報復にも備えています」
伝統のスコッチウイスキーも、相互関税を免れません。
リンドーレス修道院蒸留所創業者 ドリュー・マケンジー・スミスさん
「まさにアメリカでの販路拡大を計画していた矢先でした。皮肉なのはこのルーズ・ルーズの状況を、取引の極意を本にした人が作り出していること。良い取引とはウィンウィンのことでしょう?」
報復の応酬となり、世界経済が悪化するリスクをマーケットも注視しています。
岩井コスモ証券投資情報センター長 林卓郎さん
「関税については、今後、アメリカとの協議の可能性とか、日本政府の対応などで変化してくる可能性もある。そのあたりも見極めてというか、今晩の米国のマーケット以降の動きを見ていく必要がある」
◆かつてないほどの高い関税によって、日本や世界はどうなってしまうでしょうか。
トランプ大統領は、相互関税によって、日本に24%の関税を課すことを明らかにしました。
なぜ24%なのか、この根拠がはっきりしていません。
トランプ大統領は、そもそも日本に対して、「非関税障壁など含めると、46%の関税に相当する」と指摘しています。
非関税障壁とは、関税以外の方法で貿易を制限するもので、例えば、数量制限や独自の安全基準などで、アメリカは「コメ、小麦、豚肉などが貿易の障壁になっている」としています。
ただ、この非関税障壁を含めて、なぜ46%になるのか、その説明はありません。
そんななか、アメリカメディアや日本の政府関係者は、大ざっぱな計算によって算出されたと指摘しています。
まず、日本がもたらす貿易赤字を輸入額で割る。これをパーセンテージにすると46%になります。これを半分にすると23%になり、これが、今回の関税24%に近くなるといいます。なぜ半分なのか、その理由をトランプ大統領は「これはアメリカの親切心だ」としています。
また、非関税障壁の数字は、どこへという疑問もあります。
日本の財務省幹部からは「あんないい加減な計算式は初めて見た」という声も上がっています。
今後、どうなるのでしょうか。
経済産業省官僚として、TPP=環太平洋経済連携協定などでアメリカとの貿易交渉にも携わった東京大学大学院の宗像直子教授に聞きます。
宗像教授は「この関税が、このままずっと続くとは思えない。ここが交渉の出発点。大統領令に『相手国がアメリカに不利な措置を是正すれば、関税率を引き下げることができる』と書いてある」といいます。そのうえで、「日本にとってセンシティブな分野について、アメリカが制度の撤廃を求めてきた場合、この機会に制度の必要性を検討してほしい」と話します。
日米交渉の激しい貿易摩擦の事例として、宗像教授が挙げた1980年代の半導体摩擦。当時、日本の半導体は、世界トップのシェアを誇っていました。アメリカは日本製のパソコン、テレビなどに、制裁として、関税100%かけるなど、激しく衝突。日本は国内市場で外国製半導体のシェアを上げることを受け入れる結果になりました。
今後の交渉でも日本が何らかの条件を受け入れることになるのでしょうか。
例えば、アメリカ政府が「日本は関税を700%かけている」と批判するコメ。実際、日本は、コメの輸入に対して、一定の無関税枠を設け、枠を超えれば、1キログラム当たり341円という関税をかけています。
宗像教授は「仮に、アメリカが今のコメ流通の変更を求めた場合、日本政府は、このピンチをチャンスとして、日本の農業の競争力を高め、本当の意味での食糧安全保障に資する改革につなげてほしい」と指摘します。
◆ワシントンの梶川幸司支局長に聞きます。
(Q.トランプ大統領の今回の関税ですが、どう受け止めていますか)
梶川幸司支局長
「側近の中でも関税の範囲や税率をめぐっては、見解、意見の相違があって、紆余曲折があったと伝えられていますが、最終的には、トランプ氏が決断して決めたということで、予想以上に厳しい関税となりました。
そもそも、トランプ氏は強い信念があるように見えて、意見をコロコロ変えるクセもあり、私も含め、多くの人が『ここまではしないだろう』と見ていましたが、トランプ氏が関税にかける思いを、またもや見誤ってしまったかなという思いがあります」
(Q.トランプ氏の“思い”は、どこから来ているのでしょうか)
梶川幸司支局長
「アメリカが、外国の食い物にされてきたという被害者意識、あるいは、関税によって製造業を復活させるという主張。中西部・ラストベルトの支持者に向けたアピールということもいえるのですが、それだけではなく、戦後の自由貿易という国際秩序。これはアメリカが作ってきたもの。これこそが、いまアメリカの損害になっている。そうしたものとは一線を画す世界の実現を本気で目指しているのかもしれません。また、1次政権のときは、中国との関税の応酬がありましたが、いろいろな事情があり、そのときには、大幅な物価上昇ということにはなりませんでした。このことで、関税がもたらすマイナスの影響を軽視しているのではないかという指摘も出ています」
(Q.今後、どう展開していきそうでしょうか)
梶川幸司支局長
「トランプ氏は、外国の指導者が関税の免除を求めてきた場合、交渉の余地に含みは残しています。ただ、日本にとって交渉は容易ではありません。演説では、各国の「非関税障壁は極めて悪質だ」と、長い時間をかけて糾弾していて、この相互関税をめぐる交渉では、今後、大きな譲歩を迫ってくる可能性があると思います。また、自動車関税については、アメリカの製造業を復活させるというトランプ氏の信念が揺らがないとすれば、簡単に撤回するわけにもいきませんから、さらに厳しい交渉になってくるものとみられます」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2025
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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