判断の背景に“国債と金利”…相互関税の一時停止 米中の“貿易戦争”は激化【報道ステーション】(2025年4月10日)

アメリカのトランプ大統領は、日本などを対象に発動したばかりの第2弾の“相互関税”を90日間、停止すると発表しました。

■アメリカ “相互関税”90日間停止

アメリカ トランプ大統領
「報復をしてこなかった国には、関税を90日間、停止した。きっと素晴らしい結果が出て、今年中には想像すらしなかったことが実現するだろう」

金融市場は即座に反応しました。
9日のニューヨーク株式市場のダウ平均株価は、史上最大の上げ幅を記録。終値は4万608ドル45セントでした。

その流れを受け、10日の東京市場は全面高。日経平均株価の終値は3万4609円で史上2番目の上げ幅となりました。

多くの投資家が気にしているのは、そもそもアメリカで何が起きているのかということです。

証券会社の担当者
「直近ね、株だけじゃなくてアメリカの債券も売られていた。アメリカの債券が売られるということは、アメリカからお金が逃げるということですから、それは放っておけないので、軌道修正したんだと思う」

■アメリカ国債“下落”に焦り?

相互関税の一時停止という大幅な軌道修正。キーワードは“アメリカ国債”です。

株価が下落する局面では、より安全な資産とされる国債に資金が向かい、価格が上昇するといわれています。しかし、相互関税の発表後に起きたのは、株価と国債価格の両方の下落。つまり株だけでなく、国債も売られ続けるという異例の状況が起きていました。

では、誰が売っていたのでしょうか。

市場関係者の間では、中国が相互間税の報復として、売り浴びせたのではないかという見方も浮上しましたが、真相はわかっていません。

この状況を危惧したのが、投資ファンドの経営者でもあったベッセント財務長官でした。相互関税の全面的な発動から一夜明けた9日朝、ホワイトハウスでは、ベッセント財務長官が、ラトニック商務長官とともにトランプ大統領と向き合っていました。

そして、その場で発動したばかりの相互関税を90日間、一時停止する案が固まります。トランプ大統領は、直ちに自身のSNSで発表しました。

アメリカ トランプ大統領
「ベッセントやラトニックのほか、専門家にも掛け合った。けさの早い時間に案をまとめて仕上げたんだ。弁護士を通さずに自分たちの心に従って書いたんだよな?心にある思いをうまく書けたと思うし、世界や我々に明るい材料になるだろう」

■対中関税“125%”中国は報復

ただし、例外となった国があります。中国です。

アメリカ ベッセント財務長官
「頑として事態をこじらせた中国には関税を125%まで引き上げます。貿易戦争とは言いませんが、事態を悪化させたのは中国です」

中国はアメリカへの報復措置として、すでに関税を84%まで引き上げていますが10日午後、さらなる対抗策の発動を示唆しました。

中国外務省 林剣副報道局長
「執拗に関税と貿易戦争をやるなら中国は必ず最後まで付き合う」

■「誰の得にもならないのに…」

泥沼化する米中の貿易戦争。すでに深刻な影響が広がっていました。

家電などの工場が集中する広東省沿岸部の街。

葉巻のケースを製造する企業では、アメリカ向けの製品が売り上げの半分以上を占めているといいます。

企業の責任者
「トランプ大統領の動きは、全く理解できません。125%もの関税は、経営が成り立たなくなってしまいます」

いま、検討しているのは販路の拡大。ヨーロッパや中東にも出荷し、売り上げを確保しようとしています。ただし、製造拠点をアメリカ国内に移すことは考えていません。

会社の責任者
「アルバイトを雇ってこれを製造すると時給でアメリカは18ドル(約2600円)。中国は13元(約260円)。その差が何倍か考えて下さい」

一方、関税をかけた側のアメリカ。

チャイナタウンでは、いたるところから困惑の声が上がっています。

ドレスやバッグなどを販売する雑貨店は、すでに中国からの仕入れを止めています。

雑貨店店主
「チャイナタウン全体の売り上げは、以前より下がるでしょう。今後が心配ですし、仕入れの発注もしばらく控えています」
「(Q.関税の引き上げにどう対処しますか?)まったく見当がつきません。どの商品をどこから、どれぐらい仕入れるかまだ考えていません。中国から商品が届くまで通常2カ月かかるので不安です」

買い物客
「結局は、毎日、現場で働く人たちにしわ寄せがいくと思うと不憫です。消費者にも事業者にも誰の得にもなりません」

■“90日間停止”も…日本の苦境

日本も、これで一安心というわけではありません。最大の輸出品目である自動車は、一時停止の対象外。25%の追加関税が維持されたままです。

赤沢亮正経済再生担当大臣
「まだ10%の相互関税。あるいはアルミ・鉄鋼、自動車、これに課された関税はそのまま。強く見直しを申し入れるというポジションに変わりはない」

■判断の背景に“国債と金利”

◆トランプ大統領が一転して相互関税の停止に踏み切った背景には債券市場が揺れ動いたことにあったようです。

そもそもの国債と金利の関係について見ていきます。債券とは、国や企業などが、投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券のこと。満期まで保有していれば、元本+利子が得られます。

なかでも、アメリカ財務省が発行しているアメリカ国債は信用度が高く、比較的、安全な資産として扱われています。

一般的に国債が買われる=価格が上がり、金利は下がります。反対に国債が売られると価格が下がり、金利は上がります。

例えば、元本10000円・満期が1年・利率1%の場合、満期まで持ち続けると1年後には10100円になります。

これが市場で買われ、10050円に値上がりした場合、それを買って満期まで持つと10100円となり、50円分の利益が出ます。この場合、購入額に対し利回りは約0.5%に低下したことになります。つまり、値上がりすると市場での金利が下がることになります。

一方で、売られて値下がりし9950円になった場合、満期には9950円のものが10100円となり、150円分の利益が出ます。この場合、購入額に対し利回りは 約1.5%に上昇。つまり、値下がりすると市場での金利は上がることになります。

一般的にこれは国の信用が低下していると判断され、国の新たな資金調達が困難になり、財政悪化を招く恐れがあります。

アメリカ財務省が発表した今年1月の統計によりますと、海外勢のアメリカ国債の保有額は、約8兆5260億ドル。内訳を見てみると日本が高い保有率を占めていて、中国がそれに次ぐ形になっています。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2025
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