【報ステ解説】トランプ氏就任100日で焦り?アメリカ“クリミア併合”承認を提案か【報道ステーション】(2025年4月21日)

ウクライナ侵攻をめぐってアメリカがある“戦争終結案”を提示したと報じられました。その1つが、ロシアが一方的に併合したクリミア半島をアメリカがロシアの領土として認めるというものです。ウクライナは今週中の回答を迫られています。

■“復活祭停戦”もやまぬ攻撃

ロシア正教会の最も重要な祝日、復活祭を前に、プーチン大統領は動きを見せていました。

ロシア プーチン大統領
「人道的配慮に基づき、ロシアは19日の午後6時から21日の午前0時までの復活祭停戦を宣言します。その期間、全ての戦闘を停止するよう命じます」

復活祭にあわせて日本時間午前6時までの停戦を一方的に宣言。

ロシア プーチン大統領
「キエフ政権が合意を守る意思があるのか。和平交渉でウクライナ危機の根本原因を取り除く用意があるのか。この停戦が示すことだろう」

ウクライナの停戦に向けた本気度を見るといった狙いでしたが、ゼレンスキー大統領は停戦中にも3000回近くの攻撃を受けたと主張。ロシア側も4900回、ウクライナの停戦違反があったと主張しています。停戦期限は延長されることはありませんでした。

■ウクライナに今週中の回答迫る

ただ、イースター休暇もゴルフに興じたトランプ大統領は強気です。

アメリカ トランプ大統領のSNS(20日)
「うまくいけばロシアとウクライナは今週中に合意するだろう」

自信の背景には、トランプ政権が今、ウクライナ側に投げている戦争終結案があります。

中身はというと、2014年にロシアが一方的に併合を宣言したクリミア半島。その併合をアメリカ政府が承認することや、ウクライナがNATOへの加盟を諦めるといった“ロシア寄り”の姿勢が透けて見えるものです。

ウクライナにとってクリミア半島は「戦争終結にはすべての領土の回復が条件」としてきた譲れない一線。だからこそ、奪還作戦を行ってきました。

しかし、2期目のトランプ政権になってから、ウクライナ側に必要な譲歩の1つとされることが増えていたのも事実です。

アメリカ トランプ大統領(2月)
(Q.ウクライナの国境が2014年以前に戻る見通しは)
「可能性は低いように見える。領土の一部は戻るとは思うが一部だ」

先週、フランス・パリで開かれた、ルビオ国務長官らとウクライナ側の会談。“クリミア譲歩”を含めた案は、この場で機密文書として提示されたと報じられています。

ウォール・ストリート・ジャーナル(20日)
「アメリカ政府は現在、これらの案に対するウクライナ政府の回答を待っており、今週中にロンドンで開かれるアメリカ・ウクライナ・欧州の当局者らによる会合で示される見通しとなっている」

今週中に回答を迫られたウクライナ。トランプ大統領は、答えが「ノー」なら手を引くと言わんばかりの脅しをかけています。

アメリカ トランプ大統領(18日)
「ロシアかウクライナどちらかが合意を難しくするのであれば『君たちは愚かだ。ひどい連中だ。我々は手を引く』と伝える。そう言わずに済むことを願う。この戦争を終わらせたい」

■NATO加盟も認めず…真意は

防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.クリミア半島をロシア領として認めるという案が報道されました。どうみますか)

防衛省防衛研究所 兵頭慎治さん
「これはウォール・ストリート・ジャーナルの独占記事で、ウクライナメディアも引用しながら報道しています。トランプ大統領は“就任100日以内の停戦”を目指していましたが、ロシアの交渉に対する姿勢が固いこともあって焦りが出てきたのか、大幅に譲歩しようとする動きがみられつつあります。ロシアとの交渉にあたるアメリカのウィトコフ特使は『ロシアが占領している5つ全てをロシア領に認定しないと、ロシアは積極的に交渉に応じないのではないか』と発言し、ホワイトハウス内で批判を受けた経緯があります。5つ全部を認めることはアメリカもできない。しかし、2022年の侵攻前に占領したクリミア半島を認めることで、ロシアとの間に妥協点を探ろうとしているのでは」

(Q.クリミア半島の占領を容認したら、他の領土の返還につながりますか)

防衛省防衛研究所 兵頭慎治さん
「ウォール・ストリート・ジャーナルの記事によると、アメリカは残りの4州に関して、ロシア軍の撤退を求めないようです。今の軍事的に占領した状態が続く可能性があります。ただ、ロシア領と認めないということは、将来的に外交交渉で返還の余地はあると言いながらも、プーチン大統領はすでに憲法を改正してロシア領と認定しています。そのため、残りの4州も手放さないと思います」

■トランプ氏「就任100日」で焦り?

(Q.クリミア半島は、ロシアが武力を背景に一方的に併合しました。それを容認するとなるとアメリカも批判を免れないと思いますが)

防衛省防衛研究所 兵頭慎治さん
「ロシアの領有を認めてしまうと、アメリカが力による現状変更を認めてしまう。法支配による国際秩序が崩れてしまう危険が高まります。ただ、トランプ大統領は何とか今月中にも停戦合意を達成したい。ボールは今、ウクライナにあって、アメリカが提案した和平案を受け入れるかどうか。トランプ大統領は今週中の歩み寄りを期待しているようです」

(Q.ウクライナは、これまでアメリカの要望をのんできましたが、流石にクリミアのロシア領土化はのめないと思いますが)

防衛省防衛研究所 兵頭慎治さん
「これを認めてしまうと、これまで何のために戦ってきたのかということになります。クリミア半島にいるウクライナの人々を見捨てるのかと言う国内の批判も招きかねません。さらに、将来の安全保障もアメリカから得られない状況で、NATO加盟も断念しろとなっています。ウクライナからすると、将来のロシア再侵攻がないようにということですが、この和平案をのんでもNATOには入れない。のまないとアメリカが完全に手を引いてしまうという非常に厳しい状況になっています」

■プーチン大統領の思惑は

(Q.ロシア・ウクライナ・アメリカ。この3カ国のうち、最も得をしているのはロシアではないですか)

防衛省防衛研究所 兵頭慎治さん
「この交渉自体が米ロ主導で始まっていることと、早期停戦を急いでいるのはトランプ大統領だけです。結果的にロシアを利する形で進展しているようにみえます。今後の注目点は、来月9日の『対独戦勝記念日』です。プーチン大統領は当初、ここにトランプ大統領を招待して、中国の習近平国家主席と共に、ヤルタ会談の復活ではないですが、3カ国で世界について話し合おうというプランがあったようです。ただ、停戦交渉が芳しくないなかで、アメリカに向かってロシアと中国が向かっていくというプランBの方向に行きつつあると思います。いずれにしても今週が交渉の1つの山場です」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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