農業政策を“大転換”へ…小泉“コメ担当大臣”が描く『随意契約』その効果と課題【報道ステーション】(2025年5月22日)

「5キロ3000円台でなければならない」という石破総理の当面の目標実現に向け、“コメ担当大臣”を自称する小泉農水大臣が本格始動しました。放出した備蓄米を速やかに行きわたらせ、値下げをスピーディーに実現したいとしていますが、流通の現場では期待の一方、新たな手法への戸惑いの声も上がっています。

■小泉氏「スピード感で結果を」

緊急登板の小泉進次郎新農水大臣。コメ問題の収拾について、こんな話題に触れました。

小泉進次郎農水大臣
「長野県の全農で販売しているコメがとうとう2900円。2000円台に乗ったという、そういったことも聞いています」

紹介したのは、備蓄米をブレンドしたコメが5キロで税抜き3000円を下回って店頭に並んでいるという事例です。他のコメより1000円ほど割安だといいます。要は備蓄米が目詰まりせずに出回りさえすれば、価格は下がるという主張です。

小泉進次郎農水大臣
「スピードを求められているから、やはりそこを重視して速やかに結果を出せるように、昨日から始動していますが、全力で頑張りたい」

夕方に行われた、農水省職員を前にした訓示でも強調したのはスピード感でした。

小泉進次郎農水大臣
「今、国民の皆さんに最も求められるのは、コメの問題をスピード感を持って結果を出せるかどうかです。農産局、コメの部隊、しっかりと全省を挙げて取り組むことができる体制を共に作って、国民の皆さんが求めているスピード感と強度で結果を出して、信頼回復を必ず果たそうじゃありませんか」

■備蓄米『入札』から『随意契約』に

それもそのはず、政府が備蓄米の放出を決めてから、すでに3カ月が経っています。今週発表された、スーパーでの平均価格は4268円と、今なお去年の倍で行ったり来たり。コメの価格を下げるべく、流通の在り方を変えると宣言したのが、21日の就任会見でした。

小泉進次郎農水大臣(21日)
「随意契約のなかで明確に価格を下げていきたい」

これまでの入札による備蓄米の放出では、最も高い値をつけた集荷業者が落札した後、卸売業者、小売店と流通のたびにコストがかさんできました。これを随意契約に改め、政府が業者と直接契約することでコストを減らし、コメの販売価格を下げるのが小泉大臣の狙いです。そして、この随意契約の対象は…。

小泉進次郎農水大臣
「これは幅広く募りたいと思います。やはり今(JA)全農を含めてかなり集中しているなかですが、現場になかなか届いていない。スーパーそして外食、そういった方々も含めて幅広く、この随意契約によって現場に届けていければと」

これまで競争入札で9割以上を落札してきた、業界団体『JA』をはじめとする集荷業者以外の業種にも、備蓄米を売り渡す考えを示しました。

そのJAグループの幹部が22日に自民党本部を訪れました。会議のテーマはトランプ関税への対応ですが、ヒアリングのために招かれた形です。会議の後に受け止めを聞きましたが、コメントはもらえませんでした。では、JAとつながりの強い、自民党の農林族議員の受け止めは…。

野村哲郎元農水大臣
「まだ分からないですよね。いずれにしても農林の会議に小泉さんも来るでしょうから、その時に聞こうと思います」

自民党 上月良祐農林部会長
「新大臣になられましたから、新しくマインドセットをして、結果が出るようしっかりやっていく。それに尽きる」
(Q.随意契約については)
「備蓄米の売却は今までこういう形では例がないので、こういう場合に随意契約をできるという1つの前例になるのでは」

チェーン展開するスーパーなどの捉え方はどうでしょうか。いざ仕入れるとなれば、これまで卸業者が担ってきた精米や袋詰めを自前でする必要が出てきます。

日本チェーンストア協会 増田充男執行理事
「まだよく分からないんで…。無償の精米機があるからそれを使ってくださいという話もあるが、そんな乱暴な話は我々もできませんし」

ただ、期待感も持っています。

日本チェーンストア協会 増田充男執行理事
「量が集められなくて、陳列するとすぐになくなってしまう。ご不便をおかけしているというケースもみられるので、価格もそうですけれど、やっぱり安定。安定供給も重要になりますので、そこは期待をしたいと思います」

小泉大臣は強気です。

小泉進次郎農水大臣(民放のテレビ番組で)
「社名は言えないが、随意契約にすると言ったことを受けて問い合わせが来ている。(備蓄米を売り渡す先は)JA全農だけではなくなる。公平性の指摘はあるが、政治の判断で随意契約をやらなければいけない局面だ」

■「“減反”やめる」に農家は困惑

新たに打ち出された改革は他にも。

小泉進次郎農水大臣
「もう“減反”はやめるんだと」

政府がコメの生産を抑えて価格の下落を防ぐ、減反政策。この政策はすでに廃止されてはいますが、農水省は今も生産量の目安を示し、コメ以外の作物に転身した農家などに補助金を出していて、減反政策は事実上、続いているとも言われます。

約20年、農業に携わってきた大谷広城さん(58)。小泉大臣の発表に正直、戸惑っています。

コメ農家 大谷広城さん
「振り回されている。コメが余ってるからということで減反政策。突然、今度はコメに変えろとなっても、今まで麦や大豆にしていた田んぼは、田んぼに戻そうとしても簡単に戻せるわけではない。土地柄が変わってしまったので」

別の農家はコメの価格についてこう話します。

コメ農家 栢内孝允さん(51)
「今現状(コメの価格が)高くなってるのは、中の卸が相当取ってるから価格が高くなっているんで。3000円だとトントンか赤字になる農家はいるかもしれない」

■“コメ担当大臣”が描く随意契約

『随意契約』とは、個別の業者と直接契約するというものです。備蓄米の流通網には集荷業者・卸売業者・小売業者などがありますが、小泉農水大臣は「スーパーや外食業者も含めて、幅広く現場に届けていくため調整している」と話していて、直接、小売業者に売り渡す方法も含めた案も示唆した発言となっています。

一方で、実施に向けては「財務省・農水省と会計法に関して調整が必要で、制度設計を22日中に固めるよう指示している」と法的な問題も含めて確認していると話しています。

これまでの『競争入札』では何がネックだったのでしょうか。最も高い価格を提示した業者に売り渡していたことから、備蓄米の価格が、政府が買い上げた時よりも60キロあたり1万円近く高く落札された(3回目入札時)という問題が起きました。

さらに、備蓄米がほとんど出回らないという問題も起きています。政府は1~2回の入札で合わせて21万トンの備蓄米を売り渡し、そのうちの94%はJAが落札しています。ただ、小売店に行き渡ったのは、先月27日時点でわずか7%。JAは出荷について「販売先からの依頼に応じ、最大限に速やかな受け渡しに努めている」と説明していますが、政府放出分の一部しか消費者に届いていないのは事実です。

江藤前大臣は「備蓄米は国有財産だから競争入札が大原則」としていましたが、その懸念はクリアできるのでしょうか。

農水省は我々の取材に対して「業者に対して随意契約で経費とか利益を条件にすることは、法律上の問題がある」としていますが、農業政策に詳しい日本総研チーフスペシャリスト・三輪泰史さんはこう話します。

日本総研チーフスペシャリスト 三輪泰史さん
「随意契約になると、売り渡す価格は契約の条件になる。その内容や契約相手をオープンにしなければならないので、備蓄米の価格が下がる可能性がある。販売までの期間を契約に盛り込むことができれば、今よりも早く確実に備蓄米が店頭に並ぶことになる。また、より安い備蓄米が販売されることで、今滞っている備蓄米の流通も促す効果が期待できる」

ただ、実施に向けてはこんな課題もあるといいます。

日本総研チーフスペシャリスト 三輪泰史さん
「農水省はなぜその業者を選んだのか、丁寧な説明をして、公平性を保つ制度設計が必要」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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