
大川原化工機をめぐる冤罪事件で、警視庁・公安部と東京地検の幹部が、社長や関係者に初めて直接謝罪をしました。一方、無実を訴えながらも勾留され、病死した元顧問の相嶋静夫さんの遺族が取材に応じ「きちんと検証し、説明と謝罪をしてほしい」と語りました。
■社長らに初の謝罪も…言い間違い
冤罪事件の逮捕から1927日。化学機械メーカー・大川原化工機にとって長くつらい日々でした。
警視庁 鎌田徹郎副総監
「当庁の捜査により、多大なご心労ご負担をおかけしたことを深くおわび申し上げます。誠に申し訳ございませんでした」
東京地検 森博英公安部長
「多大なるご負担ご心痛をおかけしてしまいました。心よりおわび申し上げます。誠に申し訳ありませんでした」
初めての直接謝罪。ただ、違法な捜査で傷つけた相手の名前は心に刻まれていませんでした。
警視庁 鎌田徹郎副総監
「大川原さま“ヤマモト”さま(島田氏の間違い)亡くなられた…」
東京地検 森博英公安部長
「大川原さま、島田さま、そして亡くなられた…相嶋さま、そのご家族の皆様方、そして大川原化工機“工業”株式会社(社名を言い間違い)の…」
名前や会社名を間違えていたのです。
東京地検 森博英公安部長
「私の言い間違いでございます。そこは申し訳ありません」
(Q.今気付いたんですか)
警視庁 鎌田徹郎副総監
「はい」
(Q.そのあと検察がちゃんと名前を言った時に聞いていないんですか)
事務方
「もう時間ですのでお控え下さい」
(Q.なんで警視総監が来ないんですか?)
事務方
「個別の質問はお控えください」
■違法逮捕・起訴には謝罪なし
冤罪・大川原化工機事件の始まりは、警視庁公安部による捜査でした。軍事転用可能な機器を中国に無許可で輸出したとして、2020年3月11日に大川原化工機の大川原正明社長ら3人を逮捕。検察は3人を外為法違反の罪で起訴しましたが、初公判の直前に取り消しました。
無実が明らかになったことで、社長や関係者らは東京都と国に賠償を求めて提訴。警察や検察の捜査が違法なものと認めた判決が今月ようやく確定しました。
20日に警視庁と東京地検の幹部が謝罪したのは、負担をかけたことについて。違法な逮捕や起訴そのものを謝罪する言葉はありませんでした。
大川原化工機 島田順司元取締役
「『心労と多大なるご負担を』という言葉の前に『違法な逮捕・起訴・勾留により』という言葉があってほしかった」
大川原化工機 大川原正明社長
「もうちょっと早く言ってほしかった。少なくとも一審が終わった時に言ってほしかった」
裁判では、法廷に立った検事の発言も波紋を広げました。
担当検事
「誤った判断だとは思っていないので謝罪しない」
20日、非公開の面談では、この発言をした担当検事のコメントが公安部長から伝えられたとのことです。
高田剛弁護士
「起訴当時の認識として話したが、判決が確定したことを受け、指摘は真摯に受け止めると。より慎重に起訴の判断をすべきだったと反省していると。関係者におわびすると」
■「よくあんな軽々しい言葉を…」
一方、出席しなかった人もいます。
相嶋さんの妻
「主人と一緒に育ててたぶどうの木。主人は趣味の小屋を建てたいなとか、畑を充実させたいなとか。お互いの夢を語っていたんですけどね。もう全部だめになっちゃって」
起訴が取り消される前に、胃がんで亡くなった相嶋静夫さんの家族は、富士山が望める家にいました。相嶋さんが老後を過ごすために移り住んだ場所です。あの日、5人ほどの警察官が現れて、相嶋さんは連行されました。その後、平穏に暮らすことはできませんでした。
(Q.ニュースを見てどう感じましたか)
相嶋さんの長男
「『ご心労・ご負担をおかけして申し訳ない』というコメントが出ていたが、そこから変わらなかった」
相嶋さんの妻
「夫は逮捕のせいで亡くなってしまった。一緒に死んでしまいそうなくらいつらかったのに、よくあんな軽々しい言葉をつかうなと」
相嶋さんは、勾留中に輸血をしなければならないほど迅速な治療が必要な状況でした。一日また一日と体調が悪くなる相嶋さん。相嶋さんの妻は拘置所宛に嘆願の手紙を送っていました。弁護側は保釈請求をしましたが、検察側が証拠隠滅の恐れがあるとして反対。裁判所も許可しませんでした。
大川原化工機 相嶋静夫顧問(2020年当時)
「早く元気になって、みんなに会いたいです」
その後、勾留執行停止を受けて入院しましたが、2021年2月7日、相嶋さんは亡くなりました。疑いが晴れるずっと前のことでした。
相嶋さんの妻
「こちらへ来て、野菜を作ったり、静岡は竹が多いので竹細工の教室に通って『竹を編んでみたい』と言ってすごく楽しみにしていました。やりたいことがいっぱいあった。ここへ来て2年で死んでしまった。主人の気持ちを考えると泣いている場合じゃない。主人はどれだけ苦しかったか、悔しかったかと思う。だから主人の代わりに悔しさを言ってあげなきゃと思っている」
■「検証踏まえた謝罪を期待」
捜査の違法性が確定したことを受けて、警視庁や最高検察庁は検証チームを立ち上げました。問題点を洗い出し、再発防止策を取りまとめます。ただ、それぞれ組織内の人で構成されたチームです。
相嶋さんの長男
「父が病気を発症した後に保釈の判断はなぜされなかったか。特に検証していただきたいところは、私としてはその部分になります。私たちが求めている謝罪は、検証の結果、具体的にどこがまずかったのか。どこを謝罪したいのか。具体的に一つひとつ示してほしいし、それが謝罪だと思います」
[テレ朝NEWS] https://news.tv-asahi.co.jp
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