研究会「中国とどうつきあうか:韓国の対外政策を参考に」⑥木村幹 神戸大学大学院教授 2013.8.8

Kimura Kan, Prof. Kobe University
神戸大学大学院の木村幹教授が、「中国とどうつきあうか:韓国の対外政策を参考に」と題して、韓中、韓米、韓日関係の現状について話した。朴槿惠政権は米中両国との連携を軸に国際関係を構想しており、その結果として日韓関係の重要性が低下してきている、と。
司会 日本記者クラブ企画委員 坂東賢治(毎日新聞)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/08/r00026067/

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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年9月号に掲載)

対中関係から読む日韓のすれ違い

韓国の中国重視の流れは変わらない。かつてのような友好的な日韓関係はもう戻ってはこない─。実に明快な結論だった。

韓国にとって、中国は貿易、投資の依存度が極めて高く、核保有を目指す北朝鮮を抑止するうえでも大きな影響力を持つ。経済と安保というマクロの現象だけ見ても、中韓接近は疑いようがない。

米中関係をどう捉えるかについても、日韓両政府には相違が生じた。朴槿恵政権は米中協調を望み、それを前提に外交政策を進める。安倍政権は東アジアにおける米中対立の可能性に注目した。日本が中国の拡大を封じ込めようとすれば、韓国はさらに中国に接近し、日本とは疎遠になる構造ができつつあるという。

日本政府もメディアも、朴政権の外交を読み誤ったと指摘した。それは何よりも、日韓関係は重要だという感情にとらわれ、「民主主義と市場経済という価値観を共有する」という理屈にこだわって、中韓接近を示す各種のデータや韓国世論の動向を分析しなかったためだという。

木村教授は口調こそ熱いが、一貫して「日韓関係をもっと広い視野で見てみよう」という冷静さを感じた。

朴政権は歴史認識で中国と連携する姿勢さえ示している。日韓国交正常化から2015年で50周年になるが、韓国内では請求権協定の見直し論まで出ている。法律と道徳をどう切り離すか、現在の価値観から歴史問題を解釈しようとする姿勢に論理的にどう対処すべきか、多角的な方策が望まれると話した。

この10年余、日韓関係は未来志向のパートナーという枕詞が使われ人的、文化交流が飛躍的に進んだ。交流はいまでも活発だが、日本の存在感は小さくなっている。この現実を見据えることがいま必要だという提言を重く受け止めたい。

東京新聞論説委員
山本 勇二

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