
世界的なリゾート地となっている後志のニセコ町が挑んでいるのが、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量をゼロにするまちづくりです。
その切り札になるのが100年もつ、とされる最新の住宅です。
環境に負担をかけず幸せに暮らす、そんな未来の生活が見えてきます。
パウダースノーで世界からスキーヤーが集まるのが、後志のニセコ町と倶知安町にまたがるニセコエリアです。
高級ホテルやコンドミニアムの建設も相次ぎ、世界の富も集まります。
しかし、ニセコ町の町長にはある危機感が。
ニセコ町 片山 健也 町長:「地球温暖化防止に待ったなしの状況。できるだけ早くゼロカーボンシティを達成したい」
世界を襲う温暖化と異常気象。そうした中でも世界に誇るパウダースノーを残したい。
その切り札になるのが、環境に負担をかけない最新の住宅街。その名も、「ニセコミライ」です。
羊蹄山のふもとに広がる、ニセコ町。
ここで始まっているのが未来の北海道の暮らしをカタチにするプロジェクトです。
その名もニセコミライ。主体は官民で立ち上げたまちづくり会社、ニセコまち。
取締役の村上さんに予定地を案内してもらいました。
ニセコまち 村上 敦さん:「第一工区のエネルギーコンセプトはオール電化。エコ給湯とエアコンを使った熱供給を考えている」
9ヘクタールの敷地に集合住宅最大13棟を建設します。
すでに5月から第1工区の工事が始まっています。
ニセコミライの特徴は温暖化の原因となる二酸化炭素などを極力出さない暮らしです。
ニセコまち 村上 敦さん:「こちらに広がる奥が第二工区。2年後くらいから建築を開始する予定。シェアハウスと分譲住宅や、賃貸住宅を作っていきたい」
すでにニセコ町内にはモデルとなる集合住宅が建てられています。
一見普通の住宅ですがすごい特徴が。
集合住宅に住む人:「冬の寒い時期でも電気代は5000円くらい」
冬は豪雪と厳しい寒さに見舞われるニセコエリア。
しかし、使っている暖房は建物全体を温めるエアコンと部屋に置かれた小さなパネルヒーターだけです。
その秘密は壁に使われた超高断熱の素材です。
玄武岩を溶かして作ったロックウールなどの素材を使い、壁の厚さは一般的な住宅の倍の20cmもあります。
ニセコミライではこうした住宅を2030年までに244戸整備する予定です。
エネルギーの自給も目指します。
太陽光パネルを設置し、発電した電力を生活や電気自動車の充電にも活用する計画です。
ニセコまち 村上 敦さん:「最大で4割から5割は太陽光発電を設置して、残りの電力は、ニセコ町内には水力発電所が3ヵ所あるので、そこから購入する形でCO2フリーのエリアを目指している」
年々影響が大きくなる温暖化と異常気象。
ニセコ町は2年前に「気候非常事態」を宣言。
2050年までに二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げました。
ニセコミライはその中核です。しかし、当初まちの目標は町民に十分に理解されませんでした。
高橋牧場 高橋 守 社長:「いったい何? 本当にそんなの実現するの? 夢物語のように言われてニセコ町民に理解が得られない」
ニセコ町内で50年以上牧場を経営している高橋 守さん。
当初は夢物語と思われた町の目標。
しかし、高橋さんは環境を守りながら安心して暮らせる町を作りたいとニセコミライを担うニセコまちの社長に就任しました。
環境に配慮したまちづくりを進めるドイツ・フライブルク市の視察も行いました。
高橋牧場 高橋 守 社長:「どうしたら環境に優しい、効率の良いエネルギーを使えるか。CO2を排出しない、そして暖かい家。ニセコは大雪のところ。実現していかなければいけない」
高橋さんが町民に理解してもらうために作ったのが先ほどの集合住宅です。
高橋牧場 高橋 守 社長:「実現して、町民の方にこういうものだと。結露のしない気密性のある家。見本にアパートを作った」
いま全国の自治体も同じような住宅の導入を目指し視察に訪れています。
ニセコまち 早田 宏徳さん:「これが全部、断熱材。叩くとトントンと音がする」
この住宅は高気密の一方、壁の中に湿度を溜めこまないため結露ができにくく腐食しません。
住宅メーカーでは耐用年数は100年と想定しています。
視察した人は。
視察ツアーに参加:「今回の取り組みは住民や将来住む人。時間軸が長いところで見ている取り組み。他とは全然違う」
視察ツアーに参加:「マイナス15度の冬でもできることは衝撃的。ニセコ町でできれば、全国でできる先進的な取り組み。波及効果もあるのではないか」
さらにニセコミライは移住希望者が多いものの住宅が足りないという課題の解決も期待されます。
5月に着工した第一工区は集合住宅、2年後をめどに建築を始める第二工区はシェアハウスを中心にアトリエ工房やランドリーカフェなどを作り、住民の交流拠点となります。
第三工区は安い賃料と光熱費で入居できる賃貸の集合住宅で、第四工区は別荘としての利用もできるワンランク上の分譲の集合住宅です。
全体で約450人が住む予定です。
ニセコ町 片山 健也 町長:「まちづくりには課題がいっぱいある。住宅不足を解決する。雪の問題や相互扶助、子どもたちが安心して遊べる空間をどうするか。全然違う」
ニセコ町 片山 健也 町長:「物を大切にする文化。地球環境負荷を考えれば、建物に価値を付ける、それを持続させる。ぜひみんなの力でモデル的なものを作りたい」
夢物語ではないことを証明する、そんなニセコの夢の物語は始まったばかりです。
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