“ドン・ファン”元妻なぜ無罪?「犯罪証明」ナシ…判決文を“読み解く” 「氷砂糖の可能性もあり覚醒剤と認定できぬ」 無罪判決に涙

「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家の突然の死を巡る元妻・須藤早貴被告の裁判員裁判。
午後1時40分、和歌山地裁は須藤早貴被告に無罪を言い渡しました。

無期懲役の求刑に対し、和歌山地裁は「元妻が殺害したとするには合理的な疑いが残る」として無罪を言い渡しました。

長蛇の列ができた和歌山地裁。須藤被告は午後1時過ぎに入りました。

2018年5月、「紀州のドン・ファン」こと野﨑幸助さん(当時77)が和歌山・田辺市の自宅で覚醒剤の多量摂取により死亡。
元妻の須藤被告が野﨑さんに覚醒剤を飲ませ、殺害した罪に問われました。

あの日、野﨑さんの家で何があったのか。

裁判の大きな争点は2つ。

そもそも野﨑さんは殺害されたのかという事件性と、殺害されたとすれば、犯人は須藤被告なのかという犯人性です。

12日の法廷に上下黒のパンツスーツに、マスク姿、ウエーブヘアで現れた須藤被告。

午後1時40分、裁判が始まり、証言台の椅子に座った須藤被告に判決が言い渡されました。

判決で、福島恵子裁判長は「野﨑さんが誤って覚醒剤を多量摂取した可能性はないとは言い切れない。被告人の犯行というのは合理的疑いが残る」などと指摘。

事故の可能性もないとは言い切れず、犯罪の証明もないとして、無罪を言い渡しました。

真っすぐ前を見つめ判決を聞いていた須藤被告。
無罪が言い渡されると視線を下げ、弁護士からハンカチを渡されると、法廷にすすり泣く声が響きました。

争点の覚醒剤をめぐり、判決文では、「当日の状況、野﨑さんの関係から被告人が覚醒剤を摂取させることは可能だった」とする一方、「被告が覚醒剤の可能性があるものを買ったことは認められるが、氷砂糖の可能性もあり、覚醒剤に間違いないとは認定できない」などと指摘。

実際、裁判の中では密売人の1人が「須藤被告に売った覚醒剤は偽物の氷砂糖だった」と証言していました。

須藤被告が事件前「老人完全犯罪」などと検索していた点については、「殺害を計画していなければ検索することはあり得ないとまでは言えない」などと指摘。

無罪判決を受けた須藤被告は閉廷後、裁判長に一礼して法廷を後にしました。

傍聴人:
どっちの判決が出てもおかしくないとは思ってた中でも、やっぱり無罪って出たときにはビックリしました。周りの様子も、おおって、どよめきじゃないですけど。

無罪判決のポイントについて、弁護士法人ユア・エース 正木絢生代表弁護士は「一番大事な、そもそも被告人が覚醒剤を入手していたか、これ自体がそもそも疑わしいとされている以上、実際の被告人が殺人罪を犯したと認めるのは無理があった。何らかのものを購入したこと自体は今回判決でも認められているので、このあたりが今後、控訴審になってくると立証が必要なポイントになると思う」と話しました。

閉廷後、会見に臨んだ裁判員は、「期間が長いのと、証人の数も多く、証拠の数も多いので、それを全て吟味した上で判決を出すのはすごく苦労した点だと思う」と話しました。

無罪判決について和歌山地検は、「検察官の主張が受け入れられなかったことは残念である。今後については判決文の内容を精査し、上級庁とも協議の上適切に対応したい」とコメントしています。

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