9回通報も…警察「対応望んでないと判断」不明当日も対応なく 川崎・女性遺体遺棄【報道ステーション】(2025年5月5日)

川崎市の住宅で岡崎彩咲陽さん(20)が遺体で見つかった事件で、白井秀征容疑者(27)が5日、送検されました。

彩咲陽さんの遺体は5日、行方がわからなくなる直前まで身を寄せていた祖母の自宅へ戻りました。遺体には焼かれたような痕跡もありました。

彩咲陽さんの父 岡崎鉄也さん
「僕は、きのう会えたんですけど、すごい酷い状態だったんで。犯人に対しては、憎しみしかないですね。普通の人間のやる事じゃないですよね。ただ殺されて、その後、焼かれて。2回、殺されたのと同じじゃないですか。もう本当にかわいそうでしかないです、娘が。なんでこんな目に遭わないといけないのか」

白井容疑者は、先月からアメリカに滞在していましたが、遺体の発見を知った親族に説得されて帰国。警察が任意同行を求め、その後、逮捕しました。当初「間違いありません」と容疑を認めていましたが、いまは、事件について話さなくなっているといいます。

地元出身で、ヒップホップクルーのメンバーとして、活動していた時期もある白井容疑者。仕事はとび職でしたが、無断欠勤が多く、解雇されたといいます。

彩咲陽さんとの出会いは、元勤務先の社長と訪れた川崎市内の飲食店。客と店員の関係でした。2人が付き合うことになったのは去年4月ごろ。家族によりますと、1カ月ほどで別れると、白井容疑者のストーカー行為が始まったそうです。

警察によりますと、彩咲陽さんは6月以降、白井容疑者のDVについて、最寄りの川崎臨港警察署に相談。
度々、白井容疑者に口頭注意をしていましたが、去年11月に2人の復縁を確認し、対応を終了したといいます。

しかし、友人によりますと、2人が再び別れた12月になって、白井容疑者のストーカー行為が、エスカレートしたとみられています。

20日早朝に撮影された写真。職場から祖母と一緒に自宅に帰る際に
撮影されたものです。彩咲陽さんは、写真をLINEのメッセージで、いとこに送っていました

岡崎彩咲陽さんのLINE
「ばばに『白井いる』って言いながら指さしたら、Uターンして逃げた」

5分後の午前7時10分には、警察署に通報していました。その内容について、警察はこう説明しています。

警察の説明
「生活安全課の警察官がいるか尋ねられたが、不在だったため『午前8時半以降に、再度、連絡してほしい』と依頼したところ『時間をおいて連絡します』と」

祖母の自宅に戻ったあと、彩咲陽さんは行方がわからなくなりました。

川崎臨港警察署への通報は、12月9日から20日にかけて合わせて9回。その内容も新たにわかりました。

12月9日午後6時35分の通報
「白井容疑者が家の周りをうろついている」

12月10日午前5時6分の通報
「白井容疑者に自転車を盗まれた」

12月12日午前4時14分の通報
「白井容疑者が自宅付近をうろうろしている。自宅周辺をパトロールしてほしい」

警察署は、彩咲陽さんから9回の通報を受けていましたが、白井容疑者に事情を聞くことはありませんでした。

警察の説明
「岡崎さんに事実確認のため、警察署に来るよう促したが、断られた。警察に対応を望んでいないと判断した」

彩咲陽さんの父 岡崎鉄也さん
「(通報)9回の話の内容は、記録をしているのか、もしくはボイスレコーダーで録音してるのかと聞いたら『記憶です』って言うですよ。記憶をたどって話をしてるだけだから、それが全部正しいかどうかなんてわからないじゃないですか」。

彩咲陽さんの行方がわからなくなった2日後には、祖母も通報しています。窓ガラスが不審な割れ方をしていたためです。

彩咲陽さんの祖母
「ガラスが割れていて『これ誘拐ですよ。白井容疑者の家、見に行ってください」と。でも何にもしてくれない。警察官は『事件性がない』とか。『これは中から、外からじゃない」とか言うの』

警察は「事件性がないという説明はしていない」と否定しています。また、祖母が「白井容疑者の家にいるかも」と話したことから、白井容疑者の自宅に向かい、話を聞いたといいますが、有力な情報は得られなかったと説明しています。

彩咲陽さんの行方がわからなくなった直後、親族は、白井容疑者と電話で、直接、話していたそうです。

彩咲陽さんの父親・岡崎鉄也さん
「祖母と叔母が(彩咲陽さんのLINEに)『どこにいるの?何しているの?』と何度か(メッセージを)送ったら、既読がなくて、『このままだったら行方不明届を出さなきゃいけない』と言ったら、既読になったんですよ、いきなり。1分後に白井容疑者から電話がかかってきたんですよ。『いま、彩咲陽ちゃんから電話があって、家に帰れないと言っていましたよ』と。叔母が『お前が連れて行っただろ』と言ったら、そこから連絡が取れていないんです。(Q.自宅に帰れないようなトラブルは)ないです、ないです。成人式も楽しみにしていましたし」

警察は、彩咲陽さんが行方不明になったあと、白井容疑者からあわせて7回、任意で事情を聴いていたと説明しています。

捜査関係者によりますと、当初「知らない」と話していた白井容疑者は、3月25日の7回目の聴取で「つきまといをしたのは間違いない」と認めました。

ストーカー規制法違反の疑いで、白井容疑者の自宅を家宅捜索したのは先月30日。このとき、床下収納から遺体の入ったバッグが見つかりました。

1カ月を要した理由について、警察は、こう説明しています。

警察の説明
「事実特定のために多くの関係者から聴取し、総合的に判断した」

父親は警察に不信感を抱いています。

彩咲陽さんの父親・岡崎鉄也さん
「娘がいなくなった直後くらいから『ストーカーで捕まえてから調べてくれ』と言っても『本人がいないと被害届が受理できない』と言われていた。今回、いきなり家宅捜索できたわけじゃないですか。もっと早くできたじゃないですか、いま、できたんだから」

◆亡くなった岡崎彩咲陽さんの家族や友人は、警察の対応の不備を訴えています。

彩咲陽さんの親族によりますと、白井容疑者から“ストーカー被害”を受けていたと主張しています。彩咲陽さん本人も、最初に警察に通報した去年6月から、何度も、容疑者からの殴る・蹴るなどの“暴行”を通報していました。
例えば、去年9月、まずは父親から「娘が元カレから暴力を受けた」と通報し、被害届を提出。彩咲陽さんも「あごを蹴られたり、頭を殴られたりした」と説明しています。ところが、翌月10月、訴えが「事実と異なる」として、被害届を取り下げています。しかし、そのわずか数日後、本人から「元カレから暴力を受けた」と通報しました。

警察によりますと、彩咲陽さん本人から警察への通報は、去年6月以降に12回以上。その半分ほどが、容疑者のうろつきや暴力などの通報です。

警察は「ストーカー被害に関する相談を受けていた認識はない」としています。その理由について「去年6月以降、数度にわたり、交際や解消を繰り返している。交際をめぐるトラブルなどについて、相談を受けていた。さらに『ストーカー行為に発展するおそれがある』と容疑者に注意を行っている。また、ストーカー規制法に定める警告については、被害者が望まなかったことから、行っていない」としています。

◆警察庁のストーカー規制・有識者会議メンバーで、被害者・加害者の双方のカウンセリングも行っているカウンセラーの小早川明子さんに聞きました。

小早川さんは「ストーカー規制法の“警告”は、本人の申し出が原則だが、付きまとい行為が繰り返される可能性が高い場合にだす“禁止命令”や、緊急の必要がある場合に出せる“緊急禁止命令”は、警察の職権でも出すことができる。その対応もできたのでは」と指摘。そのうえで、今回の警察対応の問題点を「被害者の“警告は望んでいない”という声を尊重しすぎていて、警察が“やります”という意思があまりにも見られない」といいます。

小早川さんは「今回重要なのは、DVの被害がある“危険度の高いケース”ということ。こうした場合、被害者が恐怖に支配されている・脅迫をされているなど、冷静な判断ができなかった可能性がある。そのなかで、必要な手立てを判断し、対応するのが警察の役割で、被害者の元に出向くなど、積極的なコミュニケーションが必要だった」と話します。

12月は、9日から合計9回、本人が通報しています。9日に「元交際相手が家の周りをうろついている」と通報。その後も、白井容疑者が、彩咲陽さんの祖母の家の周辺をうろつき、動画が撮影された直後の12日朝4時ごろ、そして、行方不明になった20日の朝7時ごろにも通報。これに対し、警察は「11月10日に“復縁した”と両者から説明を受けている。その後、12月9日に“うろつき被害”に関する電話連絡があり、防犯指導のうえで、詳しい状況を確認するため、来署を促したが、来署しなかった。その後も、被害者から“うろつき被害”などに関する相談はなかった」としています。

行方不明になった当日朝の電話に対し、「担当の署員が不在であったため、午前8時30分以降に再度電話してほしいと依頼したところ、被害者は『時間を置いて電話します』と言った」としています。

小早川さんは「12月から9回の通報もあったし、もっと警察が前に出て、踏み込んでいけば、命を守ることができたかもしれない」と指摘します。

警察だけでなく、パートナーの暴力やストーカー被害などを相談するところが多数あります。各都道府県に設置されている『女性相談支援センター』など、相談窓口が設置されています。

小早川さんは「今回のケースであれば、警察が直接注意や警告ができなかったとしても、警察から女性相談支援センター、また弁護士など、他の組織と積極的に連動することができたはず。現在は、支援センターから警察に被害者を連れていくことはあるが、警察から支援センターを紹介することはあまりない。この連携の強化が、今後、徹底されるべき」と指摘します。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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