
小泉進次郎農林水産大臣が、備蓄米の随意契約による売り渡しについて、申請が殺到したとして新規の受付は一旦休止すると発表しました。コメの価格高騰が続くなかで、海外では日本のコメが日本よりも安く売られているとSNSを中心に話題となっています。
■なぜ?コメ価格“逆転現象”
きいろのあひるさんのXから
「台湾のコストコで日本のあきたこまち5キロが約2600円で買えます」
SNSに投稿された1枚の画像。売られているコメには「日本産米 秋田 あきたこまち 5キロ」と、日本で作られたコメだと明記されています。
価格を見てみると539台湾ドル、日本円でおよそ2600円。海外にもかかわらず、国内の平均価格より1600円ほど安く販売されていました。
台湾に10年住む投稿者は、こう述べます。
「本当に値段が安くて、こんな値段で買っちゃっていいのかなって。魚沼産コシヒカリが699台湾ドル、今のレートだと3300円ちょっと。日本に自分の両親とか妹がいるんですけど、コメが高くてそもそも手に入らないという話を聞いている。次の一時帰国で、もしおみやげに持っていければ、おみやげに持っていこうかなと思っている」
こうした現象は、他の国でも起きています。
あやか姐さんのXから
「マレーシアで買える日本米の値段を調査してきた。2キロで1350円くらいだから、キロで675円」
こういった投稿に対し、SNSでは「なぜ海外のほうがコメ安いの?」との声も。
現在、国内のコメの平均価格は5キロ4285円。なぜ、海外の方が安いという逆転現象が起きているのでしょうか?
日本のコメの輸出拡大支援などを行っている団体によると…。
JRE全米輸 細田浩之専務理事
「今出回っているおコメっていうのは、収穫するタイミングより前に生産農家からいわゆるバイヤーさんに契約がされるわけですね。まだ2000円台の頃の値段で決められたっていうのがほとんど。そういう面では逆転現象が起こっている」
去年の春から夏にかけ、国内のコメの平均価格はまだ2000円台。この頃に契約を結び輸出されたコメが店頭に並んでいるため、海外のほうが安いという現象が起きていると言います。
■イギリスでも…日本米が安い理由は?
物価が高いといわれるイギリスでも…。
WASO 事業推進責任者 大西鴻太さん
「日本国産のおコメを山形県産の“はえぬき”っていうブランドだったり、“あきたこまち”も同様に19.99ポンド3800円ぐらいで、今年とかはそれぐらいの価格で販売している」
イギリスで日本の食品を販売するオンラインショップでは、日本産のコメが国内価格と比べても、400円以上安く売られていました。
イギリスでの日本産のコメの安さには、他にも理由があります。
細田専務理事
「特にイギリスの場合は去年の12月15日にCPTPPに加盟して、おコメの関税が0になる。実際、今売られているものはより輸入コストは下がっていってる」
去年12月、イギリスがCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)に加入し、コメの関税が一部撤廃されたことも価格が安い要因になっていました。
しかし今後の先行きは、不透明だと言います。
大西さん
「(Q.この値段は今後も維持できる?)簡単じゃないと思います。仕入れ値が上がることは予想されるので」
今後仕入れ値の上昇が予想されるため、今の価格を維持するのは難しいと言います。
■備蓄米…いつ、いくらで店頭に?
日本国内では、今なお高騰が続くコメ。そこで今週、小泉農水大臣が打ち出したのが、備蓄米の随意契約です。
「大変ありがたいことに、備蓄米の随意契約の申し込み状況が非常に盛況な状況で、現時点で約70社約20万トンというところに到達する見込み。このことを受けて、いったんこの随意契約の現時点の大手小売対象のものは休止」
随意契約を申し込んだ業者は70社。2022年産のコメが予定数量の20万トンに達する見込みだとして、一時受付を休止。制度を見直し、早ければ30日から再開するといいます。
今回申し込みを行った1社が、日用品や生活家電を扱うアイリスオーヤマのグループ会社です。27日、随意契約の申し込みに対して返答がありました。
アイリスオーヤマ 田中伸生管理本部長
「(Q.申請した書類の返事が来ている?)さっそくいただきました。今回、初回になるので、いろいろな契約関係。あとは、コメの取引に関しては都度都度お支払いを前払いしないといけないので、ちょっとイレギュラーになる。納期も今のところ、本日の入金すると5月29日の納品日で発注書も送らせていただいた」
その後、大山晃弘代表取締役社長は小泉農水大臣とも面会。
小泉農水大臣
「今後、どういった形で世の中に店頭にネット販売も考えておられる。どのようなイメージで6月の2日に並んでいくのか、お話をうかがえればと思います」
大山代表取締役社長
「今の予定ですと、6月2日に5キロ2000円税抜きで販売する計画でして。我々ネット通販ありますし、またグループの中にホームセンターがありますので、そちらでも店頭販売を考えております」
今回の随意契約、政府から受け渡しされるのは精米された米ではなく玄米です。1万5000トンの申し込みをした、大手ディスカウントストア「ドン・キホーテ」の運営会社は…。
PPIH 初山俊也常務執行役員
「精米するところを小売りは持っていないことが多いと思います。袋の確保と精米所の確保、これが一番のボトルネック(課題)です」
自社で精米機能を持たない小売業者が多いなか、カギとなるのが「精米工場の確保」です。
「随意契約」の申し込みをした小売業者が精米工場を持たない場合は、精米を他の業者に委託することになります。
■精米までの過程…工場の担当者「追いつかない」
レストランや学校などから精米の依頼を受けている、埼玉県内にある精米工場。精米までの過程を見せてもらいました。
須田商店 専務取締役 須田悦正さん
「これ玄米なんですけど、これを張り込んでいきます。粗選機って言ってごみを取る機械のところまで向かわせる。玄米の中に、田んぼで取れたごみがどうしても入ってしまうものがあるので、それを取るための工程になります」
さまざまな異物が混入しているという玄米。まずは専用の機械を使い、その異物を取り除きます。
「こちらが石抜き機になります。製品にちっちゃい石が入っちゃうので、それを取るための機械です」
「(Q.結構大きいですね?)これは大きい方ですね」
異物を排除した後は、いよいよ精米作業へ。精米の過程でコメが割れないように、2回に分けて丁寧に精米をしていきます。
「この機械の中で圧力をかけて、おコメとおコメを摩擦で白くしてるんです。摩擦が強すぎちゃうと、おコメの温度が上がっちゃうんで。コメが割れやすくなったりとか品質がおいしくなくなっちゃったりする」
精米を終えると、割れたコメを取り除くためふるいにかけます。その理由は?
「(Q.割れたコメを炊くとどうなってしまう?)べちょべちょになっちゃいますね。うまく炊けない場合がほとんどですね。これは商品にならないです」
さらに…。
「次が色彩選別機というものになります。こういう悪いおコメが取れるんですね。虫に食べられたり日にやられちゃったり、稲の中にはどうしても(見た目のよくないおコメが)出てきてしまう。それを色彩選別機の段階で取る」
稲刈りの際に混入してしまう“あるもの”もあるそうです。
「これマグネットなんですけど、金属はその途中で1回はじくんですけど、最終的にこの金属探知機で取り除いてあげて製品として出している」
様々な過程を経て行われる精米作業。工場の担当者は備蓄米について、こう話します。
「おそらく(精米業界全体として)キャパシティーはオーバーはしてしまう。稼働時間を長くして精米をしていかないと、なかなか追いつかないのかなというふうに思う」
備蓄米の精米に関し小泉農水大臣は、「酒造組合の一部からは今、日本酒の精米の稼働が非常に稼働率が悪くて空いてると。そこのマッチングを農水省も努力をすると」と述べました。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年5月28日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp
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